獣医さんの電子工作とパソコン研究室
 
 52.スイッチングレギュレーター方式のACアダプタの電圧を変更する改造
  

 

 ■ 使わなくなったスイッチングレギュレーター方式のACアダプタを活用したい
 ジャンク品でNECのノートパソコンを購入したのですが、ACアダプタが付属していませんでした。パソコンの表示を見ると 19V 60W となっていました。
手元に19VのACアダプタが無かったので、ジャンク箱の中にしまってあった 16V 4A のスイッチング方式ACアダプタを改造して使おうと、いろいろ研究した結果うまくいったので報告します。
 
 ■ 改造したのはこちらのACアダプタです
 富士通の小型デスクトップPCに使われていたACアダプタ 16V 4A が、ジャンク箱の中に眠っていたので、これがどうにかならないかと開けてみました。
  
中身は、銅板のシールドに銅のヒートシンクを使用しており、豪華な設計です。
  
基板裏側にはICが2個ついていました。
Aは M51995AFP で、データシートもルネサスのホームページにあり、スイッチングレギュレーターコントロールICであることがわかりましたが、Bはどこのメーカーの何のICかはわかりませんでした。
 
 ■ どこを改造するか
 スイッチング電源の基本ブロック図は下のようになっています。
この、出力を制御回路にフィードバックする部分をいじれば、出力電圧を変えることができるようです。
とりあえず、この付近だけ、回路図を起こしてみました。
 
μPC1093は精密可変型シャント・レギュレータで、Vref=2.495Vのものです。
これは、Refに入力された電圧がVref以上になると、K-A間が導通状態になり、フォトカプラが動作し、制御回路を制御することによりこれ以上電圧を上げないようにする働きをします。
 
下図はμPC1093のデータシートにあった標準回路図で、R1とR2で出力電圧を分圧して、Ref電圧とすることで、出力電圧をコントロールしています。
計算してみると 出力電圧(V)=(1+R1/R2,3の合成抵抗値)*2.495ですので、(1+13/2.34375)*2.495=16.34V
ということになります。 
そこで、R1の13kΩを16kΩにすれば 
(1+16/2.34375)*2.495 = 18.89V という計算が成り立ちます。
実際に16kΩ(15k+1k)の抵抗に付け替えると、18.8V程度の出力電圧を得ることができました。
改造は、このR1を20KΩの半固定抵抗に替えました。
みごと目的の電圧をえることができました。
 
 ■ 負荷をかけると電圧が出ない!
 無負荷の時には目標の19Vが出ていたのですが、負荷をかけると電圧がゼロになってしまいました。
何らかの保護回路が働いていると考え、いろいろ試行錯誤していました。
そこで、データシートを一通り目を通し、基板上のM51995AFPをみてみると、各制御用のピンは以下のようになっていました。
 
ピン番号 記号 用途 基板上での接続
7 ON/OFF リモートコントロール回路、GNDでON GND
8 OVP 過電圧保護回路  
9 DET 電圧検出回路 GND
10 F/B フィードバック フォトカプラから
19 CLM+ カレントリミット回路 GND
18 CLM- カレントリミット回路  
 
これらの6箇所で保護回路が働くのは過電圧保護回路とカレントリミット回路のみです。そうなれば過電圧保護回路が怪しそうだったので、その周辺を調べているうちに、出力の負荷によって、ICへのVcc(ピン20)電圧が変化していることに気づきました。
無改造、16V M51955-Vcc電圧
無負荷 21.8V
500mA出力 29.1V
2A出力 35.2V
4A出力 32.6V
 
8番ピンの過電圧保護回路付近は下図のような回路になっておりましたので、
IC-Vcc電圧を分圧して19V無負荷出力時でも、下図のツェナーダイオードにかかってい電圧を22V程度になるように半固定抵抗をとりつけ調節しました。つまり「だました」わけです。
 
  無負荷時のIC-Vcc
 無改造
  16V 出力の時
21.8V
 改造後
  19V 出力時
25.7V
 
結果的にこの改造が効を奏して、19Vの出力電圧でも3Aの電流を取り出すことができました。
(なぜ3Aかというと、手元にあったセメント抵抗では3Aまでしか実験できませんでした。以前作った電子負荷装置だと、ACアダプタがうなりをあげてしまうのでうまくデータをとることができませんでした。何か発振してしまうのでしょうか)
電力的には19Vで3.3AくらいまではOKのはずですが、その他の回路やトランスの規格までは吟味していませんので正確にはわかりません。
 
 
 ■ まとめ
 今回の改造は、使用している制御ICの規格表がありましたので、どうにか改造することができました。
小型のスイッチングタイプACアダプタなどでは、保護回路がそれほどでもないので、2次側の可変シャントレギュレーター近辺の改造のみで電圧を変更できる可能性が高いようです。
 
 以上、あくまで改造ですので、このACアダプタを使用した場合、接続した機器を壊したり火災の可能性もあります。改造、使用にっていては自己責任でお願いいたします。
 
参考サイト
  rs501.com ・・・ 格安ACアダプタ改造法
  非ノーマルな生活 ・・・ ACアダプタ改造
  ルネサス ・・・ M51995データシート
  
Last up date 2009/8/29

 

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